一関市と平泉町を流れる照井堰用水が、国際かんがい排水委員会が歴史や技術、社会的な価値のある水路などを認定・登録する 「世界かんがい施設遺産」にされました。照井堰は、藤原秀衡の家臣の照井太郎高春が平安末期の1180年頃に開削したと伝えられる用水路です。
愛知県・水土里ネット明治用水は、先人らが掲げた「水をつかうものは自ら水をつくれ」を合言葉に、約100年前から矢作川上流の水源かん養林を保有、管理しています。この森林には、食料生産と私たちの暮らしに不可欠な水の安定供給や土砂災害防止機能のほか、森林の光合成でCO2(二酸化炭素)を吸収し、地球温暖化を防止する機能もあります。
これら私たちのくらしに欠かすことのできない機能を果たす「環境の森林(もり)」を守るため、水土里ネット明治用水は様々な活動をしています。
茅野市の滝之湯堰と大河原堰は、今から200年以上前に、坂本養川 (さかもとようせん)の高島藩(たかしまはん)への請願によって開削された農業用水路であり、現在もかんがい用として利用されています。 坂本養川が調査をもとに計画した「繰越堰(くりこしせぎ)」という水利体系は、東西に流れる複数の河川を用水路で結び、比較的水量が多い北部の河川の余水を順々に南部の水不足地帯へ送ることにより、その沿線の農地をかんがいするもので、当時では画期的な構想でした。 両堰は、ともに蓼科山(たてしなやま)から流れ出る滝ノ湯川を取水源としており、1785年に滝之湯堰10.4kmが、1792年に大河原堰12.5kmが完成しました。 滝ノ湯川からの取水口の構造は、「芝湛(しばたたえ)」と呼ばれ、木・石などで築いた小堤防で河川を堰き止めて取水しており、全量取水ができない構造となっています。現在も受益者によって、開削当時とほぼ同じ構造で維持管理されています。
ICID(国際かんがい排水委員会)の活動と役割
国際かんがい排水委員会(International Commission on Irrigationand Drainage, ICID)は、かんがい・排水・治水等の分野で、科学技術の研究・開発、経験知見等の交流の奨励及び促進を図ることを目的に、1950年(昭和25年)にインドで設立されました。
世界かんがい施設遺産
国際かんがい排水委員会(ICID)は、かんがいの歴史・発展を明らかにし、理解醸成を図るとともに、かんがい施設の適切な保全に資することを目的として、建設から100年以上経過し、かんがい農業の発展に貢献したもの、卓越した技術により建設されたもの等、歴史的・技術的・社会的価値のあるかんがい施設を登録・表彰するために、世界かんがい施設遺産制度を創設しました。 登録により、かんがい施設の持続的な活用・保全方法の蓄積、研究者・一般市民への教育機会の提供、かんがい施設の維持管理に関する意識向上に寄与するとともに、かんがい施設を核とした地域づくりに活用されることが期待されています。
我が国においては、1951年(昭和26年)の閣議決定に基づいて、ICID日本国内委員会が組織され、ICIDへ加盟しています。以来、ICID日本国内委員会は、主にアジア・アフリカの稲作の生産性向上のための各種技術的課題を中心に研究・支援活動を行っています。また、近年においては、世界の水使用量の増加や気候変動による降水量の変動等、持続的なかんがいの実現に向けた新たな課題への支援にも取り組んでいます。
しかしながら、世界的に急速に進む人口増加、土地・水資源の逼迫、予想される食料問題、環境問題等に対処するため、まだまだ、かんがい分野における課題は多く残されています。このため、ICID日本国内委員会は、ICID日本国内委員会の事務局である農林水産省農村振興局整備部設計課海外土地改良技術室とともに、開発途上国における食料の増産、農業生産性の近代化、及び気候変動の影響への対応と検討を中心に、継続的かつ組織的なICIDへの活動参加を通じ、かんがい分野における技術交流の促進を図り、日本としての役割を果たしていく必要があると考えています。
世界かんがい施設遺産 常盤湖
平成28年11月8日(火曜日)にタイ王国のチェンマイで開催された、国際かんがい排水委員会(ICID)国際執行理事会において、常盤湖が世界かんがい施設遺産に登録されました。
常盤湖は、宇部市南東部に位置する山口県最大の湖(堤高9.4メートル、堤長65メートル、堤体積3800立方メートル、貯水量3,767,700トン、満水面積80.9ヘクタール)で、国内有数の観光地である、緑と花と彫刻に彩られた「ときわ公園」の中心を占めています。
1625年毛利藩永代家老福原家は、関ケ原の戦いで敗北した毛利家のお家事情により、宇部に領地換えとなりました。領主の福原広俊は、積極的に田畑の開作政策を進めていましたが、農民からの訴えを聞き入れ、1695年に常盤湖築堤に着手し、1698年に完成しました。さらに、溜水、用水路工事、検地等関連作業が1701年に完成し、その結果、305町9反7畝の水田を灌漑することができたといいます。
湖は、南北に約1.8キロメートル、東西に約1.3キロメートル、掌をほぼ南北の方向に押し付けた形で、北部には指先に相当する入り組んだ地形が見られます。この入り江を形づくる長く突き出した岬とそこに残された森の緑が生み出す陰影は、広大な水面の表情に変化を与え、常盤湖の景観を大変美しく彩っています。
平成28年度世界かんがい施設遺産登録施設
平成28年11月8日(火曜日)にタイ王国チェンマイで開催された第67回国際執行理事会において、下記の施設が世界かんがい施設遺産に登録されました。
ICIDは、設立以来、かんがい、排水、洪水調節、治水への応用のために、水資源ならびに土地資源の管理にあたって調査、開発、能力開発、包括的な手法の応用および世界における持続的な農業のための最新技術を含めた、工学、農学、経済学、生態学および社会科学における技能、科学、技術の開発を奨励かつ促進することを使命とし、かんがい排水に関する世界で最大規模の国際機関として活動を行ってきています。
村山六ヶ村堰は、山梨県の最北端に位置し北は雄大な八ヶ岳連峰の主峰赤岳(2,899m)を堺に長野県に接する北杜市の北東部に位置する高根町地域を灌漑している代表する堰です。
安曇野は昔から、肥沃な土壌があるにもかかわらず水がなかったため、江戸時代などは年貢米はもとより自分たちで食べる米にも苦労した土地でした。寝る間を惜しんで働いても、干ばつ(日照り)や冷害、大雨による川のはんらんなど天災の前に、村人はなすすべもありませんでした。
「うちの集落(川下)まで水を引いてもらわなければ、育った稲が全滅してしまう…」「いや、下の集落に水を分ければ、うちの集落(川上)の稲が枯れる」。こうして“命の水”を必死に取り合う人々。話し合いでは収まらず争いに発展し、うらみがつのってケガ人や死人まで出るようになっていました。
この長い間絶望的だった農業用水の問題を解決して、今の田園風景をつくる基盤となった奇跡の水路があります。それが江戸時代後半の1816年(文化13年)、住民たちの手で開削(かいさく)された拾ケ堰(じっかせぎ)です。堰(せぎ)とは、ここでは田に水をひくための水路をいいます。
今回、登録された世界かんがい施設遺産について( )=よみがな、【 】=所在地
(1)拾ヶ堰(じっかせぎ) 【安曇野市、松本市】
(2)滝之湯堰・大河原堰(たきのゆせぎ・おおかわらせぎ) 【長野県茅野市】
(3)照井堰用水(てるいぜきようすい) 【岩手県一関市、平泉町】
(4)内川(うちかわ) 宮城県大崎市
(5)安積疏水(あさかそすい) 【福島県郡山市、猪苗代町】
(6)長野堰用水(ながのせきようすい) 【群馬県高崎市】
(7)村山六ヶ村堰疏水(むらやまろっかむらせぎそすい) 【山梨県北杜市】 (8)源兵衛川(げんべえがわ) 【静岡県三島市】
(9)足羽川用水(あすわがわようすい) 【福井県福井市】
(10)明治用水(めいじようすい) 愛知県安城市、岡崎市、豊田市、知立市、刈谷市、高浜市、碧南市、西尾市】
(11)南家城川口井水(みなみいえきかわぐちゆすい) 【三重県津市】
(12)常盤湖(ときわこ) 【山口県宇部市】
(13)満濃池(まんのういけ) 【香川県まんのう町】
(14)幸野溝・百太郎溝水路群(こうのみぞ・ひゃくたろうみぞすいろぐん)
【熊本県湯前町、多良木町、あさぎり町、錦町】
世界かんがい施設遺産の申請募集について(平成 29 年分)
世界かんがい施設遺産(Heritage Irrigation Structures)とは、かんがいの歴史・発展を明ら かにし、理解醸成を図るとともに、かんがい施設の適切な保全に資するために、国際かんがい排水 委員会(ICID、International Commission on Irrigation and Drainage)が認定するもので す。 ICIDは、かんがい排水に係る科学的・技術的知見により、食料や繊維の供給を世界規模で強 化することを目的として 1950 年に設立された自発的非営利・非政府国際機関です。日本は 1951 年に加盟し、日本を含め各国が国内委員会を設置しています。現在、76 の国・地域が加盟してい ます。 世界各国のICID国内委員会からICID本部(インド、ニューデリー)への申請に基づき、 ICID本部が設置する審査会の審査を経てICID本部によりかんがい施設遺産として登録さ れることとされており、2014 年から開始されました。 2017 年分の世界かんがい施設遺産の登録に向けて、ICID日本国内委員会(事務局:農林水 産省農村振興局整備部設計課)はICID本部への申請候補施設を募集します。応募いただいた申 請候補施設はICID日本国内委員会で審査を行ったうえで、ICID日本国内委員会がICID 本部へ申請します。
平成29年度世界かんがい施設遺産の申請を受付中!
平成29年分の世界かんがい施設遺産の登録に向けて、国際かんがい排水委員会
日本国内委員会(事務局:農林水産省)は国内の申請候補施設を募集していま
す。受付は、3月31日(金)まで
http://www.maff.go.jp/j/nousin/kaigai/ICID/his/his.html
国際かんがい排水委員会の審査方法について
世界かんがい施設遺産は、かんがいの歴史・発展を明らかにし、理解醸成を図るとともに、かんがい施設の適切な保全に資するために、歴史的なかんがい施設を国際かんがい排水委員会が認定・登録する制度であり、平成26年度に創設されました。
Icid本部に設置された審査委員会において、各国のIcid国内委員会から申請があった候補施設の審査が行われ、今回のIcid国際執行理事会において、5ヶ国25施設が世界かんがい施設遺産として登録されることが決定しました。日本国内の委員会事務局は、農林水産省農村振興局整備部設計課となっております。
国内の登録施設数は、平成26年度が9施設、平成27年度が4施設で、合計27施設となりました。
お問い合わせ
ICID(国際かんがい排水委員会)日本国内委員会
〒100-0013 東京都 千代田区 霞ヶ関 1-2-1
農林水産省 農村振興局 整備部 設計課 海外土地改良技術室内
Tel. 03-3595-6339
Fax. 03-5511-8251
協力
農林水産省 〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1 電話:03-3502-8111(代表)
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