それでは、黒川温泉を紹介いたします。
黒川温泉を訪ねたのは、記憶では30年位前だったように思いますが、とにかく古い話で自分の都合の良いところしか覚えていません。最初から黒川温泉を目指していたわけではなく(失礼)、幾度か知人を訪ねて湯布院温泉や湯平温泉に宿泊した折に、熊本の黒川温泉に一度行かれてはいかがですかと、勧められたのが記憶の片隅にあり、その後いつ、どのようにして黒川温泉にたどり着いたのか記憶の糸をたぐるのですが、途中で切れてしまいます。
熊本県出身の建築家・葉祥栄氏設計による「小国ドーム」
確かに途中までは記憶しています。熊本県出身の建築家・葉祥栄氏が1988年頃、小国に大断面集成材を使って「 小国町民体育館」や「小国ドーム」を設計したことを知り見学し、路線バスにゆられてそのバスが休憩のため(昔はのんびりしていました)途中停車したところが、北里柴三郎博士のご実家前でした。馬小屋付きの平屋の木造住宅でした。
路線バスの運転手さんに聞くと、どうぞ誰もいないので自由にご覧くださいとのこと、「北里柴三郎博士が通学した小学校もこの近くにあるから見てこられたらどうですか、乗客は貴方一人だけなので、待っていますから」と貸し切りタクシー並みの親切さで、お言葉に甘え見学するとリンゴのように赤いほっぺたの子供たちが元気に運動場を駆け回っていました。
あまりお待たせしてはと思い博士のご実家まで戻りそのバスに乗車したところまでは記憶していますが、その後どうやって黒川温泉にたどり着いたのか全く記憶がありません。
今思うと、まるで流星ワゴンにでも乗って桃源郷を訪れたような気持ちです。
偶然が偶然を呼ぶもので、日が暮れはじめ宿を探そうと歩いていると、川の反対側に木造の民芸風の伝統建築(新明館)が目に入ったので橋を渡り訊ねてみると銭湯の番台のように拵えた受付に若い女性が一人ぽつんと座って「今日は慰安旅行で全員鹿児島の忘れの里 雅叙苑に視察も兼ね行っています」との返事で、たまたま親戚の娘さんが留守番をしていたわけです。
ところが、その留守番の娘さんのご実家が、大分と熊本の県境にある杖立温泉の宿泊したことのある温泉旅館で、偶然その日だけ叔父さんに留守番を頼まれたのでした。
折角来ていただいたからと、案内してもらった川に沿って造られたご自慢の露天の岩風呂と洞窟風呂に入り旅館を出ると山の陽の落ちるのは早く、辺りはもう薄暗くなりしばらく歩くと一風変わった自然素材を扱う民芸店が目にとまりました。
坂の上から覗くと杉皮で葺いた屋根だったか?壁だったか外観が興味深かったので中に入るとたまたま、女主人が黒川温泉の観光組合の事務局を退職して開設されたばかりの民芸品店で、宿がなくて困っていることを話すとそのお店から近いところにある湯の華の湧く温泉を紹介してくれました。
宿から迎えに来てもらうように話してくれ、やっとのことで宿泊したのが、これから紹介する黒川温泉秘湯の宿「山河」です。迎えに来てくれた方が温泉旅館を継ぐために帰郷したばかりの若者で温泉宿の息子さんでした。
秘湯の宿「山河」に到着するまで車の中で伝統的な檜風呂の企画設計をして各地の温泉旅館・リゾートホテル等を訪ねていることを話すると、「明日お帰りはどちらまで行かれるのですか?」と尋ねられ「日田」に行きますと答えると、「じゃあ、道中お話もお聞きしたいし明日朝、日田のバスセンターまでお送りします」と言われる、大変熱心な方だなあと思い、次の日は、霧が出ると前も見えなくなるという日本の三大美林・日田杉の山林の曲がりくねった道らしきものを越え、ノンストップで1時間以上かかる日田のバスセンターまで送ってくれたのでした。
その折に昨日、露天の岩風呂に入った新明館のご主人は露天の岩風呂造りの名人で洞窟風呂をご自分で掘られただけでなく、弟さんの温泉旅館やほかの旅館さんの岩風呂も造られ、黒川温泉は露天岩風呂の宿というコンセプトを定着させた功労者だと聞き、お会いできなかったのが残念で、後ろ髪を引かれる思いでした。
黒川温泉各旅館の露天風呂です。
そんな思い出の詰まった黒川温泉は通称「地蔵湯」といって昔々、父親が病に倒れ孝行息子が父親の代わりに行商をして通り道にあるお地蔵さんに毎日、お供えをして祈念していると、ある日息子に不祥事があり息子の身代わりになったお地蔵さんを祀った場所を掘ると温泉が出て、その温泉で沐浴をすると、たちどころに病が治ったという言い伝えがあります。(おおよそ間違ってないと思いますが、黒川温泉に行かれたら是非、地蔵堂で確かめてください。)小生も入浴しましたが地蔵堂の前に公衆浴場があります。入浴体験してみてください、きっとご利益があると思います。
黒川温泉発祥の首なし地蔵尊
黒川温泉秘湯の宿「山河」のある場所の近くには昔から泉のように自然に温泉が湧いていたところがあったそうです。村人たちが野良仕事の後、温泉に入浴して一日の仕事の疲れを癒す場所で、昔から湯の華が湧出する、村人にとってはなくてはならない健康を維持するための宝物のような場所だったようです。(前出の民芸店店主談)確かにそのように聞いた覚えです。来た道は忘れても、温泉のことは鮮明に記憶しています。
“薬師の湯”が湧く秘湯の宿
秘湯の宿「山河」は、黒川温泉街から車で約5分位。森のなかにひっそりと佇む宿です。田の原川のせせらぎが聞こえ、四季折々で表情を変える山里の風景をゆっくりと堪能できる湯の華が湧く温泉宿です。また、「日本秘湯を守る会」会員として日本の温泉の伝統を守り続けています。
『薬師の湯の由来』を物語にしたものがありましたので紹介いたします。
くまもとの「あそ」という山の さらに奥にある黒川に、今でも伝わる、 むかし、むかしのおはなしです。
黒川の山深く、不思議なお湯が 湧き出るところがありました。 切り傷や、まけものによく効くので 村人は「くすり湯」と名づけ、 大切に守ってきました。
あるとき、ひとりの男が 『くすり湯が、山の奥ではなく、 里山にあればみんなが喜ぶ』と 言い出し、土を掘り始めました。
しかし、なかなかお湯は湧き出ません。 「今日出なかったらあきらめよう」 男がそう考えた朝、 掘った穴から、『くすり湯』が こんこんと湧いてくるではありませんか。
「よし、ここにたくさんの人が来れる すてきな宿を作ろう、 みんなに『くすり湯』に入ってもらおう」 そして男はこの『くすり湯』を 『薬師の湯』と名づけました。
これが、“山河”のはじまりです。
切り石の内湯と木製デッキには、檜の露天風呂のついた部屋。和室の隣は洋風の寝室。
周囲は自然環境に恵まれている。木と水と温泉。料理は行ってからのお楽しみです。
最後に
森の中に溶け込む、七つの湯
旅館 山河の湯は、薬師の湯(単純硫黄泉)と美肌の湯(ナトリウム塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉)の二つの自家源泉からなる100%掛け流しの温泉です。3000坪の敷地内に露天風呂、内風呂、桶風呂、貸切風呂といった7つの趣の異なるお風呂があります。
もやいの湯
四季の湯
薬師の湯
六尺桶風呂
桧風呂
切石風呂
お問い合わせ
黒川温泉 旅館 山河/熊本県阿蘇郡南小国町大字満願寺6961-1
TEL 0967-44-0906/FAX 0967-44-0570
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
石川県 いしかわ観光特使
2コメント
2017.04.20 11:07
2017.04.19 05:37