世界農業遺産の新規認定について
静岡県わさび栽培地域及び徳島県にし阿波地域が、世界農業遺産に認定されました。
概要
農林水産省は昨年3月、宮城県大崎地域、静岡県わさび栽培地域、徳島県にし阿波地域の3地域に対し、世界農業遺産への認定申請に係る承認を行いました。これら3地域のうち、国連食糧農業機関(FAO)において審査が行われていた静岡県わさび栽培地域及び徳島県にし阿波地域が、今般、世界農業遺産に認定されました。
なお、宮城県大崎地域は、昨年11月に世界農業遺産に認定されています。
認定された地域については、本年4月19日(木曜日)にローマで開催されたGIAHSインターナショナルフォーラムにおいて、認定証が授与されました。
地域の概要
<静岡県わさび栽培地域>
わさび栽培発祥の地である当地域では、山間地の沢に階段状のわさび田を作り、豊富な湧水を利用し、肥料を極力使わずに湧水に含まれる養分でわさびを栽培する伝統的な農業が継承されています。また、わさび漬けなどの加工品をはじめ、わさびを使った独特の食文化が地域に根付いています。
<徳島県にし阿波地域>
急傾斜地でありながら、カヤのすき込みによる土壌流出の防止や、独自の農具を使用した耕作技術などにより、段々畑を作らずに急傾斜の農地で農業を営む地域です。雑穀や野菜などの地域固有品種の栽培や、日本の原風景とも言える山村景観、農耕にまつわる伝統行事なども継承されています。
静岡県わさび栽培地域
伊豆「わさび田」
わさび田周辺に生息するハコネサンショウウオ
1.地域の概要
(1)農林水産業システムの名称
静岡水わさびの伝統栽培(発祥の地が伝える人とわさびの歴史)
(2)地域名
静岡県わさび栽培地域
(静岡市、伊豆市、下田市、賀茂郡東伊豆町、賀茂郡河津町、賀茂郡松崎町、賀茂郡西伊豆町
(3市4町))
(3)団体名
静岡わさび農業遺産推進協議会
(4)その他
平成 29 年3月に、日本農業遺産に認定。
2.農林水産業システムの概要
‧ わさび発祥の地であるわさび栽培地域では、豊富な湧水を使った伝統的な栽培方 式により、肥料を極力使わずに湧水に含まれる養分で高品質なわさびを栽培。
‧ 本栽培方式は、根茎肥大に適しており、病害の発生が少なく、連作障害が発生し にくい、完成度の高い栽培システム。
‧ 水の流れの緩やかなわさび田には、多様な生物が生息しており、わさび栽培によ って豊かな生態系を維持。
‧ わさびの加工品は古くから農家の副収入源であるとともに、わさび加工関連産業 は地域住民の就労の場。
‧ 地域の神社にはわさびが奉納され、わさびを使用した独特の食文化が継承される
など、わさびが生活や文化に深く根付く。
《わさびが持つ機能性成分》
1.抗菌・抗カビ作用&すりおろしたわさびと食品を密閉容器で保存すると、食中毒を引き起こす細菌の増殖を抑える効果があります。
2.抗虫作用&サバ、サンマ、イカ、サケなどの魚介類には線虫アニキサスが寄生しています。わさびに含まれるアリルからし油には、この虫の活動を停止させる効果があります。
3.抗ガン作用&わさびに含まれる6-メチルスルフィニルヘキシルからし油はガン細胞の増殖を抑える効果があります。
4.血栓予防作用&わさび独特の「沢の香り」の主成分による効果で、血液中の血小板の凝集を抑制し、血液凝固を防ぎます。(この成分は生わさびだけに含まれます。西洋わさびや粉わさびには存在しません。)
5.抗下痢作用&腸管粘膜下における塩素イオン分泌を抑えるため、下痢を抑える作用があります。
6.骨増強作用&実験でマウスの頭頂骨の骨量を増進する作用があったことから、骨粗鬆症に有効と期待されています。
徳島県にし阿波地域
急傾斜地にカヤをすき込んで土壌流出を防ぎ、独自の農機具を用いて段々畑を作らずに斜面のまま耕作する独特な農法で、在来品種の雑穀など多様な品目を栽培している。
農林水産業システムの名称 「にし阿波の傾斜地農耕システム」
1.地域の概要
(1)農林水産業システムの名称
にし阿波の傾斜地農耕システム
(2)地域名
徳島県にし阿波地域
(美馬市、三好市、つるぎ町、東みよし町(2市2町))
(3)団体名
徳島剣山世界農業遺産推進協議会
(4)その他
平成 29 年3月に、日本農業遺産に認定。
2.農林水産業システムの概要
‧ 表土が薄く場所によっては斜度 40 度にも及ぶ急峻な山間部において、傾斜地の 条件に合わせて、ほ場・採草地・居住地を配置するという独自の土地利用が特徴。
‧ 急傾斜地でありながら、カヤ(ススキ等)のすき込みによる土壌流出の防止や、 独自の農具を使用した耕作技術などにより、段々畑の様な水平面を作らずに急傾 斜の農地で営農。
‧ 雑穀や野菜の地域固有品種が栽培されるほか、ソバ、山菜、果樹など少量多品目 を栽培。
‧ 採草地には希少な動植物が生息しており、生物多様性の保持に寄与。
‧ 急傾斜畑・採草地・古民家等が織りなす日本の原風景とも言える山村景観や、保
存食への加工や食文化、農耕にまつわる伝統行事を継承。
世界農業遺産とは
世界農業遺産は、世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域を国連食糧農業機関(FAO)が認定する制度です。
世界農業遺産認定地域
世界で19カ国49地域、日本では11地域が認定されています。
国内の世界農業遺産認定地域 ※カッコ内は認定年
世界農業遺産認定基準
申請地域は、国連食料農業機関(FAO)が定めた5つの基準と保全計画に基づき、評価されます。
1.食料及び生計の保障
申請する農林水産業システムは、地域コミュニティの食料及び生計の保障に貢献 するものである。
2.農業生物多様性
申請する農林水産業システムは、食料及び農業にとって世界的に重要な生物多様
性及び遺伝資源が豊富であること。
3.地域の伝統的な知識システム
地域の伝統的な知識システムが、「地域の貴重で伝統的な知識及び慣習」、
「独創的な適応技術」及び「生物相、土地、水等の農林水産業を支える天然資
源の管理システム」を維持していること。
4.文化、価値観及び社会組織
申請する農林水産業システムには、地域を特徴付ける文化的アイデンティティ、風 土、資源管理や食料生産に関連した社会組織が存在すること。
5.ランドスケープ及びシースケープの特徴
長年にわたる人間と自然との相互作用によって発達してきたランドスケープやシー
スケープを有すること。
システムの持続性のための保全計画
申請地域は、農林水産業システムを動的に保全するための保全計画を作成するこ と。
世界農業遺産申請から認定までの流れ
世界農業遺産への認定申請に係る承認及び日本農業遺産の認定における
基準及び評価の視点
協力
農林水産省 〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1 電話:03-3502-8111(代表)
鎹八咫烏 記
伊勢「斉宮」の明和町観光大使
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