川越は室町時代後期に太田道真、道灌親子が基礎を築き、江戸時代初期に城下町として整えられた。以来、舟運などにより商業都市として繁栄した。町割は寛永年間(1624~1643)の形態をほぼ継承し、保存地区は近世初期以来の町人地の枢要部にあたる。町並の景観は、明治26年の大火後に建築された外壁を黒漆喰塗とした蔵造の商家建築が主役である。
川越のご家庭やお店の神棚には川越氷川神社のお札が祀られている。神棚はなくとも、川越氷川神社宮司様曰く「いちばん大切なのは、神さまのお力のこもったおふだを大切に思う心です。」
川越氷川神社
川越のまちの魅力
川越は、武蔵野台地の東北端にあり、入間川が西部から北部、東部へと流れ、古代から自然環境にたいへん恵まれたところでした。現在の川越のまちづくりの基は、江戸城を築いた 太田道真・道灌父子が扇谷上杉氏の居城として、長禄元年(1457)に河越城を築いたころからといわれています。 江戸時代になり、江戸の北辺の要衝として重要視され城下町として隆盛を極めました。特に知恵伊豆と呼ばれた松平信綱は、寛永 15 年 (1638) の「川越大火」の翌年に城主となり、復興にあたり「町割」を行いました。
伊能図大図写・部分 明治6年(1872)写 国立国会図書館蔵
城の南北や城下の出入口にあたる街道筋に武家地が配置され、町人地では十ヵ町四門前の制度を定め、商人町の上五ヵ町、職人町の下五ヵ町による十の町と四つの門前町で構成されました。
寺社地においては、城下町の北部から西部にかけて外側から町人地を保護するように意識的に配列し、外防御線が形成されました。
なお、川越では町の周辺に村が町場化した町と村の中間的地域の郷分が形成されました。また、町割の根幹をなす街路は、十字路の他に丁字路やカギ型路、袋小路を含む五の字型を基本として計画され、この街路形態は、現在も色濃く残っています。
川越の伝統的な町並みは間口が狭く、奥行きの長い敷地割りのため、表は連続的に軒を連らねながらも、奥には中庭を取り、さらに裏手には寺社のオープンスペースがあるなど、商業地としてのにぎわいの演出と快適な住環境を両立させる知恵が活かされたものとなっています。
川越を代表する歴史的景観「蔵造りの町並み」
川越を代表する歴史的景観である「蔵造りの町並み」の形成は、明治 26 年(1893)の川越大火を契機としています。この大火でまちは3分の1以上を焼失し、たいへん大きな被害をうけました。まちの復興にあたり川越商人は、当時表通りで唯一残り現在重要文化財となっている大沢家住宅(1792)の蔵造り(店蔵)を範として、東京(江戸)に多く建てられていた日本の伝統的な防火建築である土蔵造りを主に採用しました。
大沢家住宅(1792)の蔵造り(店蔵)
首都圏の多くのまちでは、かつてあった歴史的な町並みが壊されていきましたが、このまちでは、住民主体のまちづくりによって「小江戸」と呼ばれるにぎわいをみせた当時の面影を「蔵造りの町並み」として今に伝えています。 また、まちのシンボルである「時の鐘」、大
正・昭和期に建築された洋風町屋や銀行などの近代建築が調和した町並みは、わが国の都市建築の変遷をうかがわせるものであり、全国的にもたいへん貴重な町並みとして評価されています。
まちのシンボル「時の鐘」
平成 23(2011)年には、「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法 律」に基づく「川越市歴史的風致維持向上計画」が国から認定を受けました。
川越市は、これまでの景観まちづくりの成果として、「時の鐘」が残したい日本の音風景
100 選(環境庁)、「菓子屋横丁」がかおり風景百選(環境省)の選定を受け、「川
越一番街蔵造りの町並み」がグットデザイン賞特別賞アーバンデザイン賞((財)
日本産業デザイン振興会)、「川越歴史的町並み地区」が都市景観大賞都市景観 100
選(建設省)、「都市景観啓発パンフレット」が自治体優秀まちづくりグッズ賞((社)
日本都市計画学会)を受賞するなど、国やさまざまな団体から顕彰されています。
重要伝統的建造物群保存地区
番号 都道府県 地区名称等 種別 選定年月日 選定基準 面積(ha)
1 北海道 函館市元町末広町 港町 平1.4.21 (三) 14.5
2 青森 弘前市仲町 武家町 昭53.5.31 (二) 10.6
3 青森 黒石市中町 商家町 平17.7.22 (一) 3.1
4 岩手 金ケ崎町城内諏訪小路 武家町 平13.6.15 (二) 34.8
5 宮城 村田町村田 商家町 平26.9.18 (一) 7.4
6 秋田 横手市増田 在郷町 平25.12.27 (二) 10.6
7 秋田 仙北市角館 武家町 昭51.9.4 (二) 6.9
8 福島 下郷町大内宿 宿場町 昭56.4.18 (三) 11.3
9 福島 南会津町前沢 山村集落 平23.6.20 (三) 13.3
10 茨城 桜川市真壁 在郷町 平22.6.29 (二) 17.6
11 栃木 栃木市嘉右衛門町 在郷町 平24.7.9 (二) 9.6
12 群馬 桐生市桐生新町 製織町 平24.7.9 (二) 13.4
13 群馬 中之条町六合赤岩 山村・養蚕集落 平18.7.5 (三) 63.0
14 埼玉 川越市川越 商家町 平11.12.1 (一) 7.8
15 千葉 香取市佐原 商家町 平8.12.10 (三) 7.1
16 新潟 佐渡市宿根木 港町 平3.4.30 (三) 28.5
17 富山 高岡市山町筋 商家町 平12.12.4 (一) 5.5
18 富山 高岡市金屋町 鋳物師町 平24.12.28 (一) 6.4
19 富山 南砺市相倉 山村集落 平6.12.21 (三) 18.0
20 富山 南砺市菅沼 山村集落 平6.12.21 (三) 4.4
21 石川 金沢市東山ひがし 茶屋町 平13.11.14 (一) 1.8
22 石川 金沢市主計町 茶屋町 平20.6.9 (一) 0.6
23 石川 金沢市卯辰山麓 寺町 平23.11.29 (二) 22.1
24 石川 金沢市寺町台 寺町 平24.12.28 (二) 22.0
25 石川 輪島市黒島地区 船主集落 平21.6.30 (二) 20.5
26 石川 加賀市加賀橋立 船主集落 平17.12.27 (二) 11.0
27 石川 加賀市加賀東谷 山村集落 平23.11.29 (三) 151.8
28 石川 白山市白峰 山村・養蚕集落 平24.7.9 (三) 10.7
29 福井 小浜市小浜西組 商家町・茶屋町 平20.6.9 (二) 19.1
30 福井 若狭町熊川宿 宿場町 平8.7.9 (三) 10.8
31 山梨 甲州市塩山下小田原上条 山村・養蚕集落 平27.7.8 (三) 15.1
32 山梨 早川町赤沢 山村・講中宿 平5.7.14 (三) 25.6
33 長野 長野市戸隠 宿坊群・門前町 平29.2.23 (二) 73.3
34 長野 塩尻市奈良井 宿場町 昭53.5.31 (三) 17.6
35 長野 塩尻市木曾平沢 漆工町 平18.7.5 (二) 12.5
36 長野 千曲市稲荷山 商家町 平26.12.10 (二) 13.0
37 長野 東御市海野宿 宿場・養蚕町 昭62.4.28 (一) 13.2
38 長野 南木曽町妻籠宿 宿場町 昭51.9.4 (三) 1245.4
39 長野 白馬村青鬼 山村集落 平12.12.4 (三) 59.7
40 岐阜 高山市三町 商家町 昭54.2.3 (一) 4.4
41 岐阜 高山市下二之町大新町 商家町 平16.7.6 (一) 6.6
42 岐阜 美濃市美濃町 商家町 平11.5.13 (一) 9.3
43 岐阜 恵那市岩村町本通り 商家町 平10.4.17 (三) 14.6
44 岐阜 郡上市郡上八幡北町 城下町 平24.12.28 (三) 14.1
45 岐阜 白川村荻町 山村集落 昭51.9.4 (三) 45.6
46 静岡 焼津市花沢 山村集落 平26.9.18 (三) 19.5
47 愛知 名古屋市有松 染織町 平28.7.25 (一) 7.3
48 愛知 豊田市足助 商家町 平23.6.20 (一) 21.5
49 三重 亀山市関宿 宿場町 昭59.12.10 (三) 25.0
50 滋賀 大津市坂本 里坊群・門前町 平9.10.31 (三) 28.7
51 滋賀 彦根市河原町芹町地区 商家町 平28.7.25 (二) 5.0
52 滋賀 近江八幡市八幡 商家町 平3.4.30 (一) 13.1
53 滋賀 東近江市五個荘金堂 農村集落 平10.12.25 (三) 32.2
54 京都 京都市上賀茂 社家町 昭63.12.16 (三) 2.7
55 京都 京都市産寧坂 門前町 昭51.9.4 (三) 8.2
56 京都 京都市祇園新橋 茶屋町 昭51.9.4 (一) 1.4
57 京都 京都市嵯峨鳥居本 門前町 昭54.5.21 (三) 2.6
58 京都 南丹市美山町北 山村集落 平5.12.8 (三) 127.5
59 京都 伊根町伊根浦 漁村 平17.7.22 (三) 310.2
60 京都 与謝野町加悦 製織町 平17.12.27 (二) 12.0
61 大阪 富田林市富田林 寺内町・在郷町 平9.10.31 (一) 11.2
62 兵庫 神戸市北野町山本通 港町 昭55.4.10 (一) 9.3
63 兵庫 豊岡市出石 城下町 平19.12.4 (二) 23.1
64 兵庫 篠山市篠山 城下町 平16.12.10 (二) 40.2
65 兵庫 篠山市福住 宿場町・農村集落 平24.12.28 (三) 25.2
66 兵庫 養父市大屋町大杉 山村・養蚕集落 平29.7.31 (三) 5.8
67 奈良 橿原市今井町 寺内町・在郷町 平5.12.8 (一) 17.4
68 奈良 五條市五條新町 商家町 平22.12.24 (一) 7.0
69 奈良 宇陀市松山 商家町 平18.7.5 (一) 17.0
70 和歌山 湯浅町湯浅 醸造町 平18.12.19 (二) 6.3
71 鳥取 倉吉市打吹玉川 商家町 平10.12.25 (一) 9.2
72 鳥取 大山町所子 農村集落 平25.12.27 (三) 25.8
73 島根 大田市大森銀山 鉱山町 昭62.12.5 (三) 162.7
74 島根 大田市温泉津 港町・温泉町 平16.7.6 (二) 36.6
75 島根 津和野町津和野 武家町・商家町 平25.8.7 (二) 11.1
76 岡山 倉敷市倉敷川畔 商家町 昭54.5.21 (一) 15.0
77 岡山 津山市城東 商家町 平25.8.7 (一) 8.1
78 岡山 高梁市吹屋 鉱山町 昭52.5.18 (三) 6.4
79 広島 呉市豊町御手洗 港町 平6.7.4 (二) 6.9
80 広島 竹原市竹原地区 製塩町 昭57.12.16 (一) 5.0
81 山口 萩市堀内地区 武家町 昭51.9.4 (二) 55.0
82 山口 萩市平安古地区 武家町 昭51.9.4 (二) 4.0
83 山口 萩市浜崎 港町 平13.11.14 (二) 10.3
84 山口 萩市佐々並市 宿場町 平23.6.20 (二) 20.8
85 山口 柳井市古市金屋 商家町 昭59.12.10 (一) 1.7
86 徳島 美馬市脇町南町 商家町 昭63.12.16 (一) 5.3
87 徳島 三好市東祖谷山村落合 山村集落 平17.12.27 (三) 32.3
88 徳島 牟岐町出羽島 漁村集落 平29.2.23 (三) 3.7
89 香川 丸亀市塩飽本島町笠島 港町 昭60.4.13 (三) 13.1
90 愛媛 西予市宇和町卯之町 在郷町 平21.12.8 (二) 4.9
91 愛媛 内子町八日市護国 製蝋町 昭57.4.17 (三) 3.5
92 高知 室戸市吉良川町 在郷町 平9.10.31 (一) 18.3
93 高知 安芸市土居廓中 武家町 平24.7.9 (二) 9.2
94 福岡 八女市八女福島 商家町 平14.5.23 (二) 19.8
95 福岡 八女市黒木 在郷町 平21.6.30 (三) 18.4
96 福岡 うきは市筑後吉井 在郷町 平8.12.10 (三) 20.7
97 福岡 うきは市新川田篭 山村集落 平24.7.9 (三) 71.2
98 福岡 朝倉市秋月 城下町 平10.4.17 (二) 58.6
99 佐賀 鹿島市浜庄津町浜金屋町 港町・在郷町 平18.7.5 (二) 2.0
100 佐賀 鹿島市浜中町八本木宿 醸造町 平18.7.5 (一) 6.7
101 佐賀 嬉野市塩田津 商家町 平17.12.27 (二) 12.8
102 佐賀 有田町有田内山 製磁町 平3.4.30 (三) 15.9
103 長崎 長崎市東山手 港町 平3.4.30 (二) 7.5
104 長崎 長崎市南山手 港町 平3.4.30 (二) 17.0
105 長崎 平戸市大島村神浦 港町 平20.6.9 (二) 21.2
106 長崎 雲仙市神代小路 武家町 平17.7.22 (二) 9.8
107 大分 日田市豆田町 商家町 平16.12.10 (二) 10.7
108 宮崎 日南市飫肥 武家町 昭52.5.18 (二) 19.8
109 宮崎 日向市美々津 港町 昭61.12.8 (二) 7.2
110 宮崎 椎葉村十根川 山村集落 平10.12.25 (三) 39.9
111 鹿児島 出水市出水麓 武家町 平7.12.26 (二) 43.8
112 鹿児島 薩摩川内市入来麓 武家町 平15.12.25 (二) 19.2
113 鹿児島 南九州市知覧 武家町 昭56.11.30 (二) 18.6
114 沖縄 渡名喜村渡名喜島 島の農村集落 平12.5.25 (三) 21.4
115 沖縄 竹富町竹富島 島の農村集落 昭62.4.28 (三) 38.3
合計43道府県95市町村115地区 3,883.0
重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年11月20日文部省告示第157号)
伝統的建造物群保存地区を形成している区域のうち次の各号の一に該当するもの
1.伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの
2.伝統的建造物群及び地割がよく旧態を保持しているもの
3.伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示しているもの
参考
現在、川越市立博物館において「絵図・地図で読み解く川越」開催中!
江戸時代から明治・大正・昭和30年代までの川越の歴史を絵図や地図から読み解きます。
会期 :7月15日~8月15日まで
会 場:川越城本丸御殿 大広間
川越市立博物館は、川越城二の丸跡にある
〒350-0053 埼玉県川越市郭町2丁目30−1
時間: 本日営業 · 9時00分~17時00分
電話: 049-222-5399
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
協力(順不同)
文化庁 〒100-8959 東京都千代田区霞が関3丁目2番2号 電話番号(代表)03(5253)4111
川越氷川神社 〒350-0052 埼玉県川越市宮下町2-11-3 電話 049-224-0589
川越市役所 〒350-8601 埼玉県川越市元町1丁目3番地1 電話:049-224-8811(代表)
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