伝円山応挙筆 木版筆彩(神戸市立博物館所蔵)
文化庁が補助している大規模修理事業である三十三間堂千体千手観音像(重要文化 財)の保存修理が完了し,平成29年12月22日(金)午前9:00,妙法院の三十三間堂(京都市東山区三十三間堂廻り町 657)に最終的な搬入・復位を行うことになり ましたのでご案内いたします。
1.概要
「三十三間堂」の名で知られる京都・蓮華王院三十三間堂に安置される1001体の
千手観音像は,平安時代の創建当初像124軀,鎌倉時代再興時の像876軀により構
成され(残りの1軀は室町時代の補作),京都に栄えた王朝文化の華やかさと壮大なスケ
ールを今に伝えています。(1件の彫刻の重要文化財としては最大数です。)
この大群像は,昭和48年度より,文化庁の「国宝重要文化財保存整備費補助金」に
より,所有者である妙法院が継続して保存修理を実施してきました。毎年おおむね15
~30軀ずつ,特に平成25年以降は平均40軀と数を増やして集中的に修理を実施し,
本年12月に1001号まで到達し,45年の長きにわたったこの修理がようやく完了
いたします。なお,1件の彫刻の修理期間としては過去最長です。
修理の内容は,像の上に積もった塵埃のクリーニングと,表面に押された金箔が下地
から浮き上がってきているのを接着剤などにより止める作業が主なものです。10段のひな壇の上に並べられている千手観音像の表面には,絶え間なく訪れる参拝者の衣服の繊維など埃が次第に付着し,10年も経つと無視できない量となります。そ
の下層では少しずつ表面のコーティングの損傷が進行していきます。修理はこのような状況に対応するために行われてきました。
千体千手観音像の修理は過去にも,昭和11年度から同31年度にかけて実施されています。この修理は終戦の年である昭和20年や戦後の混乱期にも途絶えることなく行
われていました。このように本修理事業は,我が国の文化財保護の歴史の中でも特筆すべき意義をもつものといえます。
2.修理年度
昭和48年度~平成24年度(※1)(年に約15~30軀ずつ修理)
※1 うち7年間は三十三間堂の本尊千手観音像及び二十八部衆・風神雷神像(い
ずれも国宝)の修理のため中断
平成25年度~29年度(年に約40軀ずつ修理)
施工現場
3.総事業費(昭和48年度~平成29年度)
923,208,409円 (うち約60%を文化庁が補助)
4.施工者
公益財団法人美術院(仏像修理・文化財修理を行う団体であり,選定保存技術保存
団体(※2)に認定されています。)
※2 文化庁では,文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技
能である「文化財の保存技術」のうち,保存の措置を講ずる必要のあるものを
「選定保存技術」として選定し,その保持者や保存団体を認定しています。
公益財団法人美術院 国宝修理所とは
古文化財(彫刻および大型工芸品)の保存修理を行なう団体です。
岡倉天心が明治31年(1898)に創設した「日本美術院」の国宝修理部門が組織の起源で、創設時から現在に至るまで一貫して国庫補助による文化財修理を依嘱されてきました。国宝・重要文化財に指定されている木彫(仏像・神像など)の修理は、そのほとんどを手がけており、地方自治体指定や未指定の文化財修理にも積極的に携わっています。
百年を越える文化財修理の伝統を有しますが、代々技術者に承け継がれてきた修理技法のうち、特に「木造彫刻修理」技術は、文化財保護法が定める「選定保存技術」に第1号として選定されています。
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
協力(順不同)
文化庁 〒100-8959 東京都千代田区霞が関3丁目2番2号 電話番号(代表) 03(5253)4111
公益財団法人美術院 〒600-8146 京都市下京区七条通高倉東入ル材木町476-1
TEL075-371-3533
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