美津島町鶏知の住吉神社
1月~4月上旬まで対馬では、イベントが立て続けにあり【寄稿文 その6】大変遅くなりました。九州・山口県・本州各地からも大勢の方たちにご参加いただきこの場をお借りして御礼申し上げます。因みに1月は「十日恵比寿」「節分護摩祈祷会」、2月は「サンゾーロー祭(亀ト神事)」「赤米頭受け神事」、3月は「千俵蒔山野焼き」「あそう物産市&河内酒造 蔵開き」「弓射り祭り(百手祭り)」「小船越『百手祭り』」「つしま海道音楽祭」、4月は「千尋藻みなと祭り」と、大きなイベントだけでもこんな様子でした。さらに5月は「島大国魂御子神社大祭 【開催日】 2018年5月3日(木) 【開催地】 長崎県対馬市上県町佐須奈」や、「ひとつばたごイベント【開催地】長崎県対馬市上対馬町鰐浦地区 【備 考】 例年4月末~5月上旬開催」等が控えています。
ひとつばたごと韓国展望台
韓国まで49.5㎞の至近距離にある上対馬町は、天気のよい日には韓国釜山市の町並みが望める、まさに「国境の町」です。この展望所は、地理的にも歴史的にも深い関係にある韓国の古代建築様式を取り入れて建造されており、展望台についてはソウルのパゴダ公園にある多目的施設を、ゲートについては韓国国際ターミナル(釜山)の入口ゲートをそれぞれモデルにしています。展望所から見る釜山の夜景も大変美しく、トイレ・駐車場等も整備されているため、観光スポットとして人気を博しています。
是非皆様も、ゴールデンウイークには国境の町「対馬」にお出かけください。
少し広報活動をいたしましたが、今回のテーマは「航海神 ツツノオ三神(住吉三神)」です。
【日本神話】 ツツノオ
ツツノオ(筒男)はイザナギの禊により出現した海神です。瀬の深みで清めるとソコツツノオ(底)が、中間ではナカツツノオ(中)が、表面ではウワツツノオ(表)が誕生したとされます。その際、同じく海神であるソコツワタツミ、ナカツワタツミ、ウワツワタツミも生まれています。(イザナギ・イザナミにより生み出されたオオワタツミとは別神であり、また宗像三神とも異なる系統の海神です)
ツツノオ三神は、神功(じんぐう)皇后に神託を下した神として皇室において重要視され、また航海の守護神として、遣隋使や遣唐使の派遣の際にも篤く崇敬されていました。総本社は住吉(大阪)にあり、住吉三神とも呼ばれています。
【対馬の伝承】
延喜式に、対馬島下県(しもあがた)郡の名神大社・住吉神社の記録がありますが、対馬ではツツノオはほとんど活躍しません。対馬は大陸航路の拠点であり、国家神であるツツノオ三神を無視したとは考えにくいのですが、豊玉姫など異なる系列の海神信仰が濃厚で、その影に隠れてしまったのかもしれません。
ツツノオの名前の由来は、航海の目印となる星を意味する古語「ツツ」、対馬南部の豆酘(つつ)などいくつもの説があります。
コラム「住吉神社の分布」
延喜式に記録された名神大社・住吉神社は、住吉(大阪府)、下関(山口県)、博多(福岡県)、壱岐、対馬(どちらも長崎県)に鎮座しています。
豊玉町仁位の和多都美神社。山幸彦はここで豊玉姫と出逢いました。
祭神は、山幸彦と豊玉姫。カップルになりました。
遣隋使や遣唐使の派遣の際には、まず大阪で安全祈願祭を行い、瀬戸内海を渡ると下関、外海に出て博多、玄海灘を越えて壱岐、そして対馬で最後の祈願祭を行い、はるかな中国へと旅立っていきました。
対馬近海は、自然の猛威や異国との緊張に満ち、神頼みをしなければ越えられない海域であり、住吉三神は朝鮮半島へとつながる大陸航路を守護すべく配置されていたのです。
なお、対馬の住吉神社は古い時代に、鴨居瀬(対馬市美津島町)から鶏知(同町)に移祭したと伝わり、鴨居瀬を元宮、鶏知を新宮と呼びます。移祭の時期は不明で、どちらが延喜式に記載された式内社であるかは、古くから論争があったようです。
「( )内の番号はページ末の『神社庁に登録されている対馬の神社130社』を参照」
住吉神社(鴨居瀬)
神社番号
周辺の神社 (45) 式内社(名神大社) 阿麻氐留神社(44)
鴨居瀬の住吉神社。山幸彦の到着地で、豊玉姫の出産地でもあります。
鶏知の住吉神社の元宮。鴨居瀬の住吉神社周辺の入り江には紫色のサンゴ(ソフトコーラル)が多く、万葉集に「紫瀬戸」と称えられています。
アクセス
美津島町小船越から国道382号線を北上し、分岐を東(右)鴨居瀬方向に進み、住吉大橋手前で右に斜面を下った海辺に鎮座。
周辺の雰囲気・環境など
対馬市美津島町鴨居瀬は、対馬海峡東水道に突き出した半島に位置する集落で、古い時代から大陸航路の重要な港として知られていました。
住吉神社前の海は、名所「紫の瀬戸」として知られています。
神社のプロフィール
拝殿前の鳥居は海に面し、この地が航海の拠点であったことを実感できます。また、近隣の赤島~住吉神社~小船越をめぐると、古代航路の雰囲気がよくわかります。
ツツノオ三神とともに祭られているウガヤフキアエズは豊玉姫の子で、紫の瀬戸の紫(サンゴ)は出産の血だと伝えられています。
住吉神社(鶏知)
神社番号 (36) 式内社(名神大社)
境内社 和多都美神社(式内社)
美津島町鶏知(けち)の住吉神社です。隣りに小さな和多都美神社もあります。
祭神は、豊玉姫・玉依姫・ウガヤフキアエズ。山幸彦(お父さん)はどこかへ行ってしまいました。
アクセス
美津島町鶏知(けち)で国道382号線から県道24号線に入り、400m進んで信号を右折すると鳥居・駐車場が見えてきます。
周辺の雰囲気・環境など
美津島町鶏知(けち。正字は「雞」)は近年、国道382号線沿いに大型スーパーやホームセンターが立ち並び、商業地として発展しています。古くは神功皇后が、鶏が鳴いたことでこの地に集落があることを知った(鶏知)という由来を伝える集落です。
神社のプロフィール
現在、社殿は内陸にありますが、傍を流れる鶏知川は対馬海峡東水道に面する高浜に注ぎ、北は浅茅湾につながる海上交通の拠点でした。
住吉神社は本来、ツツノオ三神を祭るはずですが、ウガヤフキアエズや豊玉姫などの海神が祭られています。
周辺の雰囲気・環境など
白嶽からの眺め
対馬市美津島町鴨居瀬は、対馬海峡東水道に突き出した半島に位置する集落で、古い時代から大陸航路の重要な港として知られていました。
対馬の中央に広がる浅茅湾の東岸に、古代から江戸時代まで港町として栄えた「小船越」(こふなこし)という集落があります。
対馬は、泣く子も黙る荒海・玄界灘(げんかいなだ)と、異国に接する恐ろしい朝鮮海峡(対馬海峡西水道)に挟まれており、対馬の波穏やかな内海・浅茅湾は、まさに海上のオアシスと呼べる天然の良港でした。
小船越には、いにしえの雰囲気をそのまま残す西漕手(にしのこいで)という古代の港跡があります。
ここは、浅茅湾と対馬海峡が接する陸峡部であり、古代より日本本土と朝鮮半島・中国大陸を往来する海上交通の要衝でした。
日本本土からやってきた船はまず鴨居瀬(かもいせ)に着き、岸沿いに小船越へ。
小船越に着くと、小さな船は陸揚げして対岸へ運ばれ、大きな船は人と荷物だけを対岸の別の船に載せて、朝鮮半島・大陸を目指しました。
小さな船が丘を越えていったので「小船越」という地名になった、とされています。
もちろん、半島・大陸から戻ってくる船は、逆の行程を辿るわけです。
住吉神社
当時の航海は命がけであり、対馬に残る無数の海神系の神社は、海上の安全祈願のために祭られたと考えられています。
対馬周辺の外洋は、神頼みをしなければ渡れないほど危険に満ちていたのです。
続く・・・
【寄稿文】西 護
一般社団法人 対馬観光物産協会 事務局長
協力
一般社団法人 対馬観光物産協会
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鎹八咫烏
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